今回の改正では、元請のトラック運送業者は、下請のトラック事業者の安全運行に責任を持ち、下請の安全運行を阻害してはならないことが明確に規定された。従来立場の弱い下請が元請から違反行為を強要されて交通事故を起こしても、元請まで責任が及ばなかった。こうした元請・下請関係が交通事故を発生させる温床となっていたのである。
このため、新たな改正では元請の責任まで踏み込んでいる。
トラック事業者の安全運行などを監視する「適正化事業実施機関」の権限が強化された。従来は国土交通省の違反取締りの補助的役割を担っていたが、一段と強い権限が与えられ、トラック事業者に対し説明や資料の提出を求めることができるようになった。2002年に「貨物自動車運送事業法」の改正で、トラック運送業者に対する社会的規制が一段と強化された。
これに基づいて、取締りの具体的な強化策が明らかにされるのは2003年以降となる。以上見てきたように、現在わが国における物流の「現場」は、輸送の安全性に関して状況にある。大型の営業用トラックが引き起こす重大事故が頻発しており、物流の根幹をなすトラック輸送の安全性が大きく損なわれている。こうした輸送の安全性の喪失は、トラック運送業者の安全性の管理能力が弱体化していることに起因している。
規制緩和による競争の激化、荷主企業のコスト削減に伴う無理な要求、さらには在庫削減を求める物流システムの弊害など、わが国における物流の特有な構造が複雑に絡み合って発生しているのである。企業は全体最適のロジスティクスを志向しているが、その裏側で安全性が低下する事態を惹起している。
安全性の低下は物流業者のみにその責任を帰することができないのであって、ロジスティクスを志向する企業もまた安全性を維持する社会的責任を負っている。全体最適のロジスティクスは、安全性を担保したうえでそれを前提として成り立っている。今後、一方で、より一層の有効な社会的規制の模索とその強化が必要となるとともに、他方で、直接の当事者である物流業者の安全性の管理能力の回復が求められている。それだけでなく、物流業者を使用している企業もまた全体最適のロジスティクスの前提条件として、安全性の管理能力が強く求められているのである。
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